皮膚 … 体性神経、自律神経への刺激で代謝、体温、呼吸、消化、循環、排泄等の機能を整える施療効果があります。
筋肉 … 筋疲労や痛みを取り除き、筋の弾力性・収縮力を高めます。また、体表内臓反射で内臓の働きを回復させます。
内臓 … 内臓マニピュレイションと言われる内臓への直接的施療は内蔵機能の改善に効果があります。
関節 … 拘縮を取り除き、関節可動域を広げます。靱帯の弾力性を取り戻し強化します。
(過度のストレインを受けた靱帯は筋肉と違って弛緩します)
間接的に筋肉、腱の緊張を解消し、運動機能を増進します。
第2節 関節整体
= ジョイント モビライゼーション (Joint Mobilization)
骨と骨の接する骨端は関節軟骨で、関節包に包まれ、内腔は関節腔と言い滑液で満たされています。
関節包の内層は滑液を分泌する滑膜と言い、関節腔に関節組織を栄養する滑液を分泌します。
関節の補強装置として靱帯があり、通常は関節包の外にありますが、膝の十字靱帯のように関節内靱帯もあります。
また、顎関節、胸鎖関節、膝関節のように関節円板、関節半月を等のクッションの役目をする組織を有するものもあります。
関節を調整するには、関節に適度な刺激を繰り返し与えれば、身体の自然治癒力が働き、元の可動性や正しい位置に戻ろうとする性質があります。
(ただし、筋肉が過緊張の場合は筋肉を緩めないと関節の動きを阻害します)
大きな変位がない場合は、関節に対して、必要以上の外力をかけないことが大切です。
アジャストやスラストと言われる手技療法と違い、緩やかな力をじっくりとかけて施療します。
関節の不具合には、一般的には次のようなものがあります。
1.脱臼(だっきゅう) (Luxation)
⇒ お医者さんの分野です
2.亜脱臼(あだっきゅう) (Subluxation)
⇒ アジャスト、ストレッチ等による矯正
3.可動不良(かどうふりょう) (Fixation))
⇒ ストレッチ、ジョイントモビライゼーション等による調整
第3節 関節運動の基礎
①滑り(sliding) ②転がり(rollinng) ③軸回旋(spin)
関節包内の運動には以上の動きがあります。
下図を良く見て関節包の中での骨端の動きを理解してください。
多くは複合して動きます。
関節整体の応用編では、施療するために重要ですので記憶しておいて下さい。
しかし、伸張運動には患者さんの苦痛が大きいので、下記のような手技が適切となる。
単なる伸張運動でなく、関節包内で滑りを与えることにより、非常に効果が上がることが実証されています。
動きの大きい方の骨端が凹の場合を、
凸関節と言います。
動きの大きい方の骨端が凹の場合を、
凹関節と言います。
第4節 肩甲帯の調整
(1)肩甲胸郭関節(肩甲骨と背中側のあばら骨で作る関節)の動き
肩甲骨は肩甲上腕関節(いわゆる肩関節)と連動して動きます。すなわち、腕の動きに連動して肩甲骨が動きます。肩甲骨の動きには次のようなものがあります。
外転(がいてん) … 肩甲骨が脊柱から外側に離れる動き
内転(ないてん) … 肩甲骨が脊柱に近付く動き
外旋(がいせん)(下方回旋) … 肩甲骨下角が内方かつ下方へ回旋する動き
内旋(ないせん)(上方回旋) … 肩甲骨下角が外方かつ上方へ回旋する動き
下制(かせい) … 肩を引き下げる動きで肩甲骨は下方に動く
挙上(きょじょう) … 肩を引き上げる動きで肩甲骨は上方へ動く
健康な関節の場合は、これら上記の関節運動が正常に行われます。
肩甲胸郭関節を正常に保つため、または、フィクセーション等の変位を解消して可動域を広げるために、ストレッチやジョイントモビライゼーションが必要です。
(2)肩甲胸郭関節の調整
① 肩甲骨下制調整
側臥位。
片手を患者の肩甲骨上角に当て、他方の手を頭部に当て、カウンターで肩甲骨を下方に押し下げます。
② 肩甲骨挙上調整
側臥位。
術者は患者の肩と上腕を持ち、肩を耳の下に付けるように押しつけます。
③ 肩甲骨外旋調整
伏臥位。
患者の腕を腰に回します。
術者は片手で患者の肩を下から引き上げ、他方の手先を患者の肩甲骨の下半分に差し込みながら、肩甲骨を外旋させます。
④ 肩甲骨内旋調整
伏臥位。
患者の手を挙上させ、術者は片手で肘を引き上げ、他方の手で肩甲骨上角部に指を差し込み、肩甲骨を内旋させます。
⑤ 肩甲骨内転調整
伏臥位。
患者に両手を後頭部で組ませ、両肘を持ち持ち上げます。
または、片方ずつ行っても結構です。
⑥ 肩甲骨外転調整
仰臥位。
患者の腕を横に水平に伸ばさせた状態から、肩甲骨内側を手先で持ち上げ、外転させます。
B.肩甲上腕関節(一般呼称は肩関節)
肩甲上腕関節の動きは次のようになります。
外転 … 上腕が体幹から外側に向かう動き
内転 … 上腕が体幹に近付く動き
内旋 … 上腕が長軸を中心に内側に廻る動き
外旋 … 上腕が長軸を中心に外側に廻る動き
伸展 … 上腕が後方に向かう動き
屈曲 … 上腕が前方に向かう動き
水平伸展 … 上腕が水平な位置から胸の方に向かう動き
水平屈曲 … 上腕が水平な位置から胸から離れていく動き
① 肩関節外転・下部調整
患者側臥位。
腕を極限まで外転させた状態で、肩関節下部を手掌または肘で押圧調整します。
② 肩関節内転・上部調整
患者側臥位。
患者の腕を背側そして腹側に動かし、肩関節を内転させます。
患者の腕を体側に戻して、肩関節上部を手掌または肘で押調整します。
③ 肩関節水平伸展調整
患者仰臥位。
術者は片手を患者の脇の下から上腕骨の肩関節部に当て、他方の手は患者の腕を上からじっくりと押さえ、カウンターで上腕関節部を引き上げます。
④ 肩関節水平屈曲調整
患者は仰臥位。
腕を水平に伸ばした状態から、水平に屈曲させます。
術者は片手で患者の肩を後方に押さえながら、他方の手を患者の肘に当て、肘を胸につけるようにさせます。
⑤ 肩関節内旋調整
患者仰臥位。
術者は片手で患者の上腕部に当て、他方の手は肘の下から差し入れて、自分の手首をつかみます。
この状態で両腕を捻って、肩関節を内旋させます。
⑥ 外旋調整
患者仰臥位。
患者は肘を90度に曲げて頭上に挙げます。
術者は片手を患者の肩関節部に当ててます。
他方の手は患者の肘下から差し入れ、自分の腕をつかみます。
両腕を捻って肩関節を外旋させます。
⑦ 長軸牽引調整
患者仰臥位。
腕を挙上させて牽引します。
振動を与えると良いでしょう。
更に、腕を横に水平に伸ばし、上腕骨頭を関節窩から引き離します。
この状態で、内旋か外旋のどちらか気持ちの良い方に捻ってもらい、操体法を施してみ
ましょう。
⑧ 肩関節屈曲調整
患者側臥位で、肩関節を過屈曲。
術者は片手を患者の肩関節に当て、他方の手で肘を持って、手前にじっくりと引きます。
⑨ 肩関節伸展調整
患者側臥位で、肩関節を過伸展。
術者は片手の母指を患者の肩関節後面に当て、他方の手で患者の前腕を持ち、後方に引
き上げます。
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