五十肩の原因には、大きく分けると、肩の関節の変位と肩関節周囲の炎症があります。
五十肩の原因の多くは、回旋筋腱板(かいせんきんけんばん)の炎症によります。
回旋筋腱板とは、肩関節の外転、外旋、内旋を行う筋肉(肩甲骨の周囲にある4つの筋肉で上腕骨に付く)の腱が板状になり肩関節を覆っているものです
一般的には、rotater cuff ローテーターカフと言い、肩関節を支持する役割があります。
構成している筋肉は、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋です。
これらの筋肉がしっかりと働くことで肩関節の安定性が保たれます。
ローテーターカフが上手く働かないと、肩関節の運動が不安定になり、慢性化すると肩関節の障害が発生します。
五十肩の治療では施療対称となる部分です。
(1)肩の関節の変位による五十肩の場合は、短期間で治癒します。
ただし、長年にわたる変位は、筋肉が変位した形を覚えてしまっているので、症状により違いはありますが、一般的に、10回前後の整体に加え、日常生活の姿勢に気をつけることが大切です。
肩に関連する関節には、肩甲胸郭関節・上腕肩甲関節・肩鎖関節・胸鎖関節があります。
上腕肩甲関節では、前方変位や下方変位が多く診られます。
また、肩甲骨は左右対称になっていますか?どちらかが左右上下に偏っていませんか?
左右同じでなければ骨格的にずれていると言うことです。
上腕骨は肩甲骨にはまりこんでいます。従って、腕が動くとき、腕だけでなく肩甲骨も一緒に動きます。肩甲骨と胸郭で形成する肩甲胸郭関節が正常でないと、肩甲骨の動きがおかしくなり、腕の動きにも影響されることになります。
また、鎖骨は一方は胸骨について胸鎖関節を形成しますが、もう一方は肩甲骨について肩鎖関節を形成します。
胸鎖関節や肩鎖関節がフィクセーションやサブラクセーションを起こすと、肩甲骨がスムーズに動かず、この為に腕が上がらない、上げると痛いと言った症状が出ます。
こういう場合はこの関節の調整が必要です。一般的に軽視されがちですが、胸鎖関節や肩鎖関節が変位している人は結構います。腕を廻して肩鎖関節や胸鎖関節が「ボキ!」と音がするような場合は少なくともフィクセーションです。
(2)肩関節周囲の炎症による場合は、肩関節の軟骨・靱帯・腱・滑液包などに変性・癒着・断裂・石灰化症があるので治癒に時間がかかります。
症状には、急性期・慢性期・回復期があります。
○ 動かさなくても痛い・不意にズキンと来る = 急性期
→冷却療法・キネシオテーピング・安静が必要・医者の痛め止め治療
○ 動かさなければ痛くないが、動かすとズキンと痛い = 慢性期
→ 整体施療が効果的・痛くない範囲で動かす
○ 動かしても痛くないが、動かない = 回復期
→ 関節可動域を広げる整体療法・どんどん動かす
(3)五十肩原因のまとめ
1) 軟骨・靱帯・腱の変性・癒着・断裂。
2) 腱・滑液包の炎症・石灰化。
3) 関節の変位。
* 老化や疲労による筋肉の機能低下により引き起こされます。
継続的な微細な傷により引き起こされることもあります。
* 関節のズレの場合以外は、治癒に時間がかかります。
* 治療後は一時的に痛みが増すことを必ず伝えて下さい。
(4)経穴による施療
① 曲垣(きょくえん)( 肩甲棘の上際起始部)
② 秉風(へいふう)( 肩甲棘の上際中央)
③ 巨骨
④ 天宗(肩甲骨中央)
⑤ 肩貞(関節溝下端)
⑥ 臑兪(じゅゆ)(関節溝上端)
⑦ 肩髎(けんりょう)(肩関節上後部)
⑧ 肩髃(けんぐう)(肩関節上前部)
⑨ 雲門
⑩ 肩内陵(けんないりょう)(腋窩横紋前端と肩隅穴との中点)
⑪ 臂臑(ひじゅ)(肩髃穴下方3寸)
⑫ 内烏穴(ないうけつ)(烏口突起の内側)
⑬ 上烏穴(じょううけつ)(烏口突起の上側)
⑭ 外烏穴(がいうけつ)(烏口突起の外側)
⑮ 臑会(じゅえ)(肩髎穴下方3寸)
⑯ 肩井
(5)整 体
① 関節整体の応用(肩関節)により、
滑り法・離開・軸回旋による施療は効果的です。
滑り法などが熟練していない場合は、下記の施療をしましょう。
根本的には、仙腸関節の滑り法が重要です。
② 肩に関連する関節の調整
a. 肩甲上腕関節(前方変位・下方変位が多い)
座位で肩関節を両手掌で挟んで回転。
肩関節上部で両手を組み操者の肩に患者の上腕を乗せ挙上させ、
関節の癒着を引き剥がします。
同様な体位で前方変位、後方変位の調整をします。
腋窩部に前腕を差し入れ腕を引き下げると同時に前腕で腋下部を
引きあげ、下方変位を調整します。
b. 肩甲胸郭関節(外方変位が多い)
肩甲骨が外方変位の場合は、腕を後に回すと痛みがでます。
内方変位の場合は、腕の外転・外旋・挙上が制限されます。
c. 胸鎖関節・肩鎖関節
仰臥位で胸鎖関節および肩鎖関節上に手掌を当て、
背中の下に手掌を当てながら外に開くように圧迫を加えます。
d. 第一肋骨
座位で第一肋骨の調整。
小指の付け根で肩中央部の胸椎1番に内側45°下に圧迫を加えながら
腕を外転しながら挙上させます。
③ 受者は坐位。肩関節前部を母指圧定しながら、腕を挙上そして後に伸展させます。
④ 肩関節後部を母指圧定しながら、腕を挙上そして後に伸展させます。
⑤ 肩甲骨外縁を母指圧定しながら、腕を挙上そして後に伸展させます。
⑥ 肩上部を拇指圧定しながら、腕を挙上そして後に伸展させます。
⑦ 横臥位などで、肩関節の三角筋を起始部母指圧で施療します。
⑧ 五十肩の場合は、身体全体も歪んでいることが多いので、
腰背部を始めとして身体全体を施療します。
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