2017年2月26日日曜日

整体教養論|整体における刺激の法則

整体では、筋肉・骨格・神経・内臓などに刺激を与えて、身体の歪みを調整しますが、整体的刺激は、患者さんの状態により使い分けることが重要です。

第1節 刺激の種類

① 求心性刺激と遠心性刺激

マッサージ(Massage)ということばはフランス語ですが、ラテン語の「手」(Manus)と同一語源であるとされています。

マッサージは皮膚にオイルやクリームを用いて、求心性(きゆうしんせい)の刺激(手足など末梢(まつしよう)から心臓に向かう刺激)を与え、血液・リンパの還流(かんりゆう)を促すものです。

指圧のように、ツボ・反射区・トリガーポイントなど生体に現れる反応点を対象として施療する手技療法は、遠心性(えんしんせい)の刺激(心臓から末梢器官に向かう刺激)を与え、体表からの反射により内臓・神経・筋の機能を調節します。

② 整体における押圧(おうあつ)の基本手技とその作用

  押圧法の操作は、「触る」「押す」「離す」からなります

押圧する圧の強さでの分類
 1.軽圧法(けいあつほう)(軽く心地良い)
 2.快圧法(かいあつほう)(気持ち良い)
    … 母指圧で10kgから15kg圧が標準です
 3.強圧法(きようあつほう)(痛いが不快でなく我慢できる)

押圧の仕方での分類
 1.通常圧(基本的な押し方で普通の呼吸のリズムでの押圧です)
 2.緩 圧(加圧は徐々に一定圧に達する押し方で通常の2~3倍の時間をかけます)
 3.衝 圧 (一定圧を加えた後、さらに衝撃的に加圧します)
 4.持続圧(快圧法または強圧法で持続的に押す方法です。30~60秒持続させます)
 5.振動圧(一定圧のまま小刻みに震わせて刺激を与えます)
 6.撫 擦(加圧したまま皮膚の上を撫でさするもので、軽擦と強擦があります)

整体法は、生体に対して、以上のような押圧刺激などを加えることにより、生体の異常を調節します。

押圧刺激の強度を加減することによって、生体の機能を亢進(働きを活発にする)したり、逆に抑制(働き過ぎないようにする)したりすることができます。

生体の異常を判別して、必要な適量刺激を与えなければなりません。


第2節 人体に対する効果

① 皮膚及び皮下組織に対する効果
 皮膚に対しての触・圧刺激(触ったり押したりする刺激)は、皮膚及び皮下組織に分布する毛細血管の血流を増加させ、汗腺や皮膚呼吸など生命活動を盛んにし、皮膚の温度を高めます。即ち、体表が若々しく健康になるということです。

② 筋組織に対する効果
 筋肉中の血液やリンパの流れを促進させ、老廃物や有害物質等を排除し、新鮮な血液を送り、筋組織に酸素や栄養素等を行き渡らせ、筋肉の緊張を解消し、筋肉の疲労の回復、筋の運動能力の拡大に効果があります。。

③ 神経系に対する効果
 強い刺激は、抑制的・鎮静的に作用します。(=神経の働きを止める作用です)
 穏やかな刺激は、促進的・興奮的に作用します。(=神経の働きを促す作用です)

  例えば、「胸焼け」と「消化不良」に対する施療法は違います。
 「胸焼け」は胃が働きすぎて、胃酸が食道まで上がってきてしまう状態です。働き過ぎいているのですから強い刺激で施療します。貴方が既に、東洋医学を学習しているなら、胃が実証と分かりますよね。実症には強い刺激です。
 「消化不良」の場合は、胃の働きが悪いのですから、東洋医学的には胃の虚証で、反対に弱い刺激で働きを促す施療をします。

 解剖生理学的には、筋肉・神経に対する刺激とその興奮性に関してアルントシュルツの法則というものがあります。

{アルント・シュルツの刺激法則}
      弱い刺激は生体機能を鼓舞(こぶ)し、
      適度の刺激はこれを亢進(こうしん)し、
      強い刺激はこれを抑制(よくせい)し、
      最も強い刺激はこれを停止する。
               
★アルントシュルツの刺激法則は、整体施療上、非常に大切な法則ですので、しっかりと記憶して下さい。

この法則から
刺激量が多い状態(ドーゼオーバーといいます)だと
生命活動を弱める事になり
施術部位の生命活動を弱めてしまうことになり
効果を上げれないことになります。

また、症状によりどういった刺激を与えていけば良いかがわかります。

☆ 麻痺や知覚鈍麻といったような症状には
   興奮を喚起させればいいので弱めの刺激で施療します。

☆ 痛みや痙攣、筋緊張といったような症状には
   鎮静させてあげればいいので強めの刺激で施療します。


④ 循環器系に対する効果
    血管に反射的に作用して、整体直後は、血管の内圧が高まり、一時的に血圧が上昇しますが、すぐに、血管が拡張され動脈血流が促進され、身体全体の循環機能が促進されて、 血管内圧が下がります。また、リンパの流れも改善されるとともに、病気を防ぐリンパ球が増加し、免疫系の活性も高めることが確認されています。

⑤ 消化器に対する生理作用

 背部、腹部などの施療により、胃液分泌亢進、消化機能亢進、食欲増進が期待されます。


第3節 気持ち良いのが一番

 これまで学んできたことで分かるように、整体やマッサージを受けていて一般的には気持ち良いのが一番です!

 強すぎて痛い状態だと刺激過剰になり、筋肉は刺激が強ければ防御するため硬くなります。筋性防御という状態がおこり、筋肉を緩めるはずが逆に硬くなってしまいます。

 また、筋肉に強い刺激を与えれば、筋肉を傷めてしまう可能性もあります。
 また、弱すぎても受けた感覚がしないでしょう。

 気持ちが良く、眠くなりそうなくらいの刺激が一番良いのです。自律神経の副交感神経が優位になりリラックスし、血管は拡張して、消化器系の内臓の働きも良くなります。

 生理学的にみてみると、刺激の量によって内臓を始めとした生命活動がどう関係するかというと、弱い刺激では組織の働きを目覚めさせ、強い刺激では組織の働きを抑制します。非常に強い刺激は組織の働きを静止させてしまいます。身体の活性化には逆効果になります。

 これは「アルントシュルツの法則」でしたね…。神経痛や過度の筋緊張状態では強めの刺激、東洋医学では実の証の場合です。麻痺や知覚鈍磨などは弱めの刺激を与えていきます。
      東洋医学では虚の証の場合です。整体・マッサージに慣れてくるとどんどん強い刺激を求める人がいます。実は、痛いほどの強い圧が気持ち良いと感じてしまっているからなのです。整体・マッサージの受けはじめに刺激量の多い刺激を受け続けるとこういった傾向があります。強い刺激に慣れてくると、感覚がどんどん鈍くなります。そして、もっと強い刺激を求めてしまうようになります。こういう悪循環が始まってしまうと弱い刺激には戻せなくなってきます。

 強い刺激を求める方には、アルントシュルツの刺激の法則を説明して、せいぜい、「イタキモ」(痛くて気持ちいい)ぐらいの刺激が良いと説明できるようにしましょう!


★ 「いやなもの反射」という副交感反射があり、痛みを伴う施療をすることもありますが、整体師もベテランになってからの手技療法です。

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