2017年2月24日金曜日

整体教養論|自然治癒力と血流障害

自然治癒力と血流障害

整体法やリフレクソロジーなど代替医療の効果は一般的に認知されています。
アメリカなどでは、整体の一種であるオステオパシーやカイロプラクティックは医者の資格です。
これら手技療法の最も大きな効果は自然治癒力の回復・増進です。
では、自然治癒力とはどういうものでしょう?

第1節 自然治癒力とは

自然治癒力とは、人体を健康な状態に維持し、ケガや病気を治す力を広くひとまとめにした表現で、人間がもつ生命力そのものです。

自然治癒力は、

恒常性維持力)=(ホメオスタシスと言います)、自己防衛力、自己再生力から成ります。

本来、これらの自然治癒力の機能は、私たちの身体に自然に備わっているものです。
しかし、内的・外的なストレスによって、自然治癒力は乱される事はご存じですよね…。

① 恒常性維持力とは、健康な身体の状態をいつでも一定に保とうとする働きです。
例えば、外気の温度が極端に変動しても、身体は熱を放散したり熱を生成して、体温が極端に上がったり下がったりすることはありません。
また、水を飲みすぎても、多量の汗をかいても、尿の量を調節するホルモンの作用によって、体内の水分量は常に一定に保たれます。運動によって筋肉の酸素の消費量が増えれば、心臓の脈拍は早くなって血液循環を促進します。

② 自己防衛力とは、細菌・微生物・ガン細胞、その他の有害物質に対して身体を守る働きです。

③ 自己再生力とは、キズついた細胞組織を、新しく健康な細胞に作り治す働きです。
例えば、この力がなければ手術で切除された臓器は切除されたままで再び正常に回復することはありません。
また、身体の表面にできたキズもふさがらず、やがて、その部位は腐っていってしまします。


第2節 自然治癒力に関わる器官  

自然治癒力に関わる組織器官には次のようなものがあります。

① 神経系 

 神経は表皮、爪、髪、関節軟骨には存在しいていません。
 それ以外の組織には広く分布して、身体の内外の情報を収集して調節・統合し、生命保持に必要な判断をして各器官に適切な命令を伝えています。
   機能的には運動神経(体および内臓)と知覚神経(体および内臓知覚)に大別ますが、臓の運動・知覚に関係するものは、自律神経と言います。

② 免疫系 

 はしかやおたふく風邪は、一度かかると二度とかからないのはご存じですね。
 病原体を専門に対応する白血球のB細胞が一度目の侵入を記憶し、二度目の侵入に対し抗体を生産して防衛します。ワクチンによる抗体産生も同じです。
 免疫とは、大まかには、「自己」と「非自己(ひじこ)」の認識をして、非自己を排除する働きをいいます。

③ 内分泌系 

 ホルモンは甲状腺・副腎・膵臓の膵島などといった内分泌腺でつくられ、血液中に分泌され、特定の生理機能を活性化したり抑制したりします。
 例えば、血糖値を上げたり下げたりは内分泌系の働きです。
 神経とともに身体の恒常性を保ち、身体の内外環境に対応する調節機構です。

④ 循環器系 

 血液は体重の約8%、5~6㍑、1回の心臓拍動で約60ccが押し出されると言われます。
 血液の主な作用は、下記の通りです。
       ア)栄養物質の運搬と代謝老廃物の排出、
       イ)体液の浸透圧(しんとうあつ)やpH、体温など恒常性の維持、
       ウ)免疫反応で細菌やウィルスなど身体にとって有害な物質を排除、
       エ)止血作用(血小板の働きです)

*神経に栄養を与え、免疫に関わる白血球を体内に循環させ、ホルモンを目的の組織に運ぶなど、①②③の系統にとって循環器系は必要不可欠な系統です。
 

第3節 自然治癒力低下の大きな原因

 自然治癒力が低下する大きな原因は、「循環不良」「血液汚濁」です。
 循環不良と血液汚濁の原因は、体内外のストレスと過食です。

 整体法は、血液循環の改善を最大の目標とします。

 血液汚濁は、食べ過ぎ・飲み過ぎ、偏った食事、運動不足に起因しますので、患者さん本人に生活習慣の見直しを指導することが求められます。


① 血液の循環不良が起きると
     
 栄養物質の運搬が阻害(そがい)されますので、阻害された組織の機能が悪くなります。
   内臓の血流が阻害されると、その内臓の働きが悪くなります。
     
   代謝有害物質の排出も阻害されますので、コリや痛みが起こります。
     
   pH(酸性とアルカリ性の度合い)や浸透圧(膜を通して、濃度の低い溶液から濃度の高い溶液に溶媒が移動するように働く圧力のことを指します。
   漬け物を塩で漬けることで理解できます)などのホメオスタシスが乱れます。
     
    細菌など有害物質の侵入に対して、白血球などの運搬が不十分で免疫機能が十分に発揮されない結果となります
     
    機能を促進させようとする器官にホルモンが運搬されず、神経機能も低下します。
    神経の機能を保つ血液循の環不良で、神経は痺れや痛みを引き起こします。
   
★ このように見てくると、循環器系が、自然治癒力に対して、最も大切な機能を果たすことが分かります。
     整体法は、血液循環の改善を最大の目標とします。

② 血流不足が神経機能に及ぼす影響は
     
 血流不足(神経には栄養血管があり神経に栄養を与えている)は、神経機能を低下させ、痺れや痛みを引き起こす原因となります。
     
   神経の機能低下が起こる状況でも痺れや痛みのない神経もあります。
   顔面神経、自律神経は痛みを感じず、内臓も痛みを感じる神経は少ないそうです。
     
   炎症が起きたり、外傷や疲労などで身体が損傷を受けると、細胞から発痛物質が産生され痛みを起こします。
  (発痛物質には、ヒスタミン・ブラジキニン・プロスタグランジンなどがあります)
     
   すると、痛みにより交感神経が緊張し、末梢血管は収縮し血液循環は悪くなり、更に発痛物質が増加して痛みを増すという悪循環になります。
   

③ 神経機能を回復させる考え方
   
 正座をしていて足が痺れるのは、膝窩動脈(膝の後ろの血管)の圧迫で、下腿にまわる血液が止められ神経が働かなくなったためです。
   このことは、血流が阻害されると神経に異常を来すことを証明しています。
     
   誰でも痛みや痺れがあれば神経に何か問題が起こっていると考えますが、痛みや痺れを感じにくい内臓などは相当な機能障害や病気になるまで神経が充分に働いているのかどうかを見分けにくいのが現実です。
     
   即ち、知覚神経は、痺れ・痛みが起こるから異常を知ることができますが、自律神経は知覚のない神経で、異常を発見するのが遅れてしまうのです。
     
   但し、自律神経の場合も、コリなどが血行不良を起こし、血行不良が神経機能低下を招くことから、神経の出口である脊柱の横の凝り・痛み(異常は関連痛として発現する)を診て、筋肉の凝りを取り、関節の拘縮を治せば神経機能が回復すると考えられます。
     
   この機序が、整体法で身体の不具合を改善できる理屈ですが、神経機能低下の多くは、関節において障害を受けていることが原因です。
   特に自律神経・感覚神経・運動神経の出入り口である脊柱の関節は重要です。
     
   関節機能異常には、筋肉と靱帯が関連しているので、異常のある関節まわりの筋肉を緩めることと、靱帯の弾力性を回復させ関節を正しい位置に戻すことが重要な施療となります。    
     
   実際の施療例を挙げれば、下肢の冷え性は、腰椎以下の椎骨神経の血流阻害か、股関節などの関節における血管の圧迫などの血流障害、自律神経の乱れ、更には熱産生機能のある筋力不足が考えられます。
     
   筋肉の過緊張を取り、股関節や椎間関節の拘縮を解消して、下肢の血管の拡張・収縮・血流を支配している腰椎椎骨神経の働きを回復することで改善できます。
   筋力不足は、患者さんに運動や自療体操を指導することで増強できます。
     
   特に内臓の病気に関しては、脊柱の周囲のコリや圧痛のあるところ(ブラジキニン、ヒスタミン、プロスタグランジンなど、発痛物質が貯留するため圧痛が生じる)は、椎骨が変位し、コリと血流阻害が起こり、椎骨神経に充分な栄養を供給できないので、神経は機能低下を起こし発病すると考えられます。
     
   逆に、内臓の機能異常が、脊椎のまわりに関連痛となって現れ、椎骨変位・コリ・痛みを引き起こすこともあります。


④ 神経機能を調和させる刺激の方法
   
 治療の目的は、神経の働きを亢進することと、抑制することです。

   神経が抑制され、筋肉や臓器の活力が低下している時は、⇒ 支配神経に刺激を与え、運動機能や代謝機能を高めます  ⇒ 軽く揉みます    … 東洋医学では補法と言います。

 神経が興奮状態で、筋肉や臓器が異常に働きすぎている時は、 ⇒  支配神経を抑制し、正常な活動に戻します   ⇒ 強く揉みます  …    東洋医学では瀉法と言います。

 例えば、「胸焼け」と「胃もたれ」の場合を考えてみましょう。
 胸焼けは、胃酸過多で、消化器が悪く働き過ぎている状態です。
        ⇒ 胃の反射区を強く刺激すると効果的です。
 胃もたれは、消化器の働きが悪くなっている状態です。
        ⇒ 胃の反射区をソフトに刺激すると効果的です。

* 東洋医学の実症・虚証を、もう一度復習しましょうね。

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