整体のアプローチする部位は、主に関節・皮膚・筋肉・内臓です。
第1節 関節への整体
特に、仙腸関節の変位・股関節の変位は、
中枢神経である脊髄を通している脊柱の脊椎椎間関節の変位にも直結し、
腰痛・肩こり・膝痛・股関節痛・坐骨神経痛・冷え性・頭痛・自律神経失調症・消化器疾病・循環器疾病・泌尿器疾病・生殖器疾病など様々な病気の原因となります。
関節の不具合は次のように分類できます。
1.脱臼(Luxation) … 関節が本来の位置から外れた状態です
2.亜脱臼(Subluxation) … 関節が本来の位置から少しずれた状態です
3.可動不良(Fixation)) … 固着とも言い、 関節が動きにくい状態です
関節を調整するには、脱臼以外は必要以上の力をかけなくても、適度な刺激を与えれば、自然治癒力が働き、元の正しい位置に戻ろうとします。関節ボキッと音を出す必要は有りません。結果的に音がしてもしなくても良いのです。
関節に対する整体は、実際には、ストレッチ・軸圧・牽引・滑り法・スラスト(アジャスト)などの手技療法で施療します。
関節整体の効果は、
1.筋肉の過緊張を取り除き、関節可動域を広げる効果があります。
2.靱帯は過度の外的障害を受けると、弛緩(ゆるむこと)してしまいます。
整体は靱帯を強化し、弛緩を改善します。
3.間接的に筋肉、腱の緊張・拘縮を緩解(ゆるめる)する効果があります。
4.仙腸関節・股関節・脊椎椎間関節の変位を調整することは、これらの関節の変位に起因する病気を改善する効果があります。
第2節 皮膚への整体
1.マッサージ系の適度な皮膚刺激は、副交感神経への刺激となり、代謝、体温、呼吸、消化、循環、排泄等の機能を整えます。
2.適度な皮膚刺激は、刺激部位にバイオホルモンやネクロホルモンと言われるホ ンが分泌されて、それが血流に乗り内臓に達して、内臓の機能が亢進して細菌など の外敵に対する防衛機能が高まります。
3.皮膚に異常が起きると、糖代謝・脂肪代謝・蛋白質代謝の障害(栄養素から細胞組 織を作り生命活動をすることが阻害される)が起き、内臓器官の機能異常となりま す。
4.また、内臓器官の不具合が皮膚感覚に異常を反映することも、証明されています。 これを内臓体表反射と言います。皮膚の異常を整体マッサージなどで施療すると内臓の不調が改善されます。これを体表内臓反射と言います。
第3節 筋肉 への整体
1.押圧など、筋肉への刺激は、静脈血やリンパ液の還流を促します。
2.代謝老廃物・乳酸・尿酸などの疲労物質やヒスタミン・プラスタグランジン・ブ ラジキニンなどの痛み物質と言われるものを静脈やリンパ管に流して取り除きます ので、疲労が回復し、痛みは軽くなります。
3.反射により内臓の調子を整え、麻痺などの神経機能を回復します。
① 筋収縮と緩解
筋肉は、使いすぎても、使わなくても拘縮して機能が低下します。
また、内臓が働きすぎても働きが悪くても、内臓を包んで保護し、脊柱など骨格につないでいる間膜と言われる組織を通して、脊柱近辺の筋肉がコリ・痛みなど影響を受けます。
② 筋肉の刺激反応
瞬間伸張 … 筋肉は瞬間的に引き伸ばされると反射的に筋収縮する性質があります。これは筋紡錘(筋肉にある引っ張る力に反応する器官です)の働きで、伸張反射と言います。
また、この性質があるから、筋肉に対して押圧する場合はゆっくりと力を入れていかなければならないのです。
持続伸張 … 筋肉は持続的(最新の研究で10秒から16秒が最適)に引き伸ばされ ると、ゴルジ腱器官(腱紡錘)(筋肉の筋から腱への移行部にある引っ張る力に反応する器官です)の働きで、筋緊張を低下させる性質があります。
整体ではこの働きを利用して筋肉の異常緊張をゆるめることができます。
ストレイン・カウンターストレイン療法、等尺性収縮後リラクゼーションなどの療法は、筋紡錘のメカニズムをセットし直すものです。
ストレッチやスラストなどは、腱紡錘の働きを利用する手技療法です。
③ トリガーポイント療法
疲労した筋肉・凝り固まった筋肉が、その筋肉の局所の圧痛だけでなく、時として頭痛のように、離れた場所に痛みを引き起こすこともあります。
痛みが他の箇所に広がることを放散痛と言います。
例えば、頭痛の原因の約70~80%は、胸鎖乳突筋のトリガーポイント(コリ)からくることが多いのです。
下肢・股関節・臀部の痛み・しびれ感は、中臀筋のトリガーポイントから発生する事も多くあります。
トリガーポイントの例
痛い部分を揉みほぐしても症状は改善されません。
トリガーポイントは、骨格筋などの中に認められる小さなこりこりした結節です。
トリガーポイントは、発生する筋肉により、特有な関連痛・運動機能傷害・自律神経症状が生じます。
筋肉の過度な動き、繰り返し動作などの結果生じ、筋肉は血流が滞って、酸素や栄養素の供給不足と老廃物の蓄積が起こります。
更に、筋肉が組織的侵害を受けると、ブラジキニン(血漿タンパク質から遊離)、プロスタグランジン(内皮細胞から合成される)、ヒスタミンなどの発痛原因物質が放出され、
痛みを感じます。
トリガーポイントの解消には、漸増加圧法(少しずつ力を加えて圧迫)による圧迫で施療した後に、筋筋膜をストレッチすると効果的です。
研究の結果、トリガーポイントの71%は東洋医学のツボと一致していると言うことですので、やはり、ツボの勉強は必要ですね。
難しいのは、トリガーポイントを見つけることですね。
ツボと言っても、教科書でならうツボと実際のツボは微妙に違います。
鍼灸の名人はそれを触診で探すことが出来ます。
教科書通りに施療してもあまり効果がないのは、位置が微妙に違うからかもしれません。
第4節 内臓への整体
① 直接施療 … 内臓を直接施療します。
一般的にはこれを内臓マニピュレーションと言います。
心臓・消化器を始めとして、それぞれの内臓は独自の動きをしており、その動きがなくなると内蔵の機能が弱くなります。
「内蔵の動きの消失」というのは「いまだ病気ではない」・・・「未病」という状態になるのかもしれません。
「体調がすぐれない」「体がだるい」「胃腸の調子が悪い」・・・でも病院の検査結果は「異常なし」… こんな状態です。
② 間接施療 … 反射点・反射区を施療します
筋肉を動かす運動神経も内臓を支配する自律神経も、背骨から分岐しています。
内臓体表反射と言い、内臓の異常がその神経を強く興奮させると、
隣接する身体の表面に伝わる神経にも影響を与えます。
結果として、その神経が支配す体表に異常があるようなことになります。
つまり、背骨周辺の状態で内臓のことがわかるということです。
すなわち、ある部位の体表が知覚異常・痛み・冷え・循環異常を起こしていると、
どの臓器に異常が有るかがわかります。 (反射区・反射点と言います。解剖生理学では関連痛と言います)
経絡経穴などへの適切な圧迫は、体表の興奮を抑え、過敏な反応を治療します。
すると、その同じ部位の神経作用が及ぶ内蔵も異常な興奮が鎮まり、悪化した機能が元に戻って正しくなり、正常機能に復帰するわけです。
この働きは筋肉にも影響を与え、コリや痛みが治まってゆき、さらに筋肉の凝りによって影響を受けていた骨格の歪みを正常位置に戻すことが可能になるわけです。
第5節 整体 = 正体 とは…
① 正中線(せいちゆうせん)に対して左右前後のバランスが取れている(歪みがない身体)
左右の足の長短、骨盤の高さ、肩甲骨の高さ、背骨の側彎など、左右前後の差がない身体を歪みがない身体と言います。。
② 骨盤(こつばん)、肩甲骨(けんこうこつ)、後(こう)頭骨(とうこつ)の左右が、外方に開いていない(引き締まった身体)
肩甲胸郭関節(けんこうきようかくかんせつ)・仙腸関節・後頭骨が締まっている状態が整体=正体です。
これらが緩んで開いたままになるのは、左右のアンバランスから起こります。
* 後頭骨が締まると顔が引き締まり、頭の働きが良くなります。
骨盤が引き締まると足腰に力が入りやすくなります。
肩甲骨が引き締まると上肢や首が強くなり、肺・心臓などの機能が強化されます。
後頭骨の筋肉が緩んで引き起こす悪影響
後頭骨は左右の後頭骨からなります。顔全体が膨らむ、脳の血行不全と血圧異常、記憶力や思考力の低下、聴覚や視覚異常など。頑張りたい時に鉢巻きをするのはこの為です。
肩甲骨の筋肉が緩んで引き起こす悪影響
肩甲骨は左右にあり、胸郭後部と肩甲胸郭関節を成します。肩こりや首凝り、猫背、消化器や肺・心臓の圧迫と機能障害、脊椎変形による神経異常などを起こします。
仙腸関節の筋肉が緩んで引き起こす悪影響
仙腸関節は左右の腸骨と仙骨から成ります。腰痛、下半身肥満、生理不順や更年期症状、排泄機能低下、冷え性、O脚などを起こしやすくなります。
* これらの関節は同時に開閉を繰り返すのが健康体と言われています。
骨盤が締まっている時は、
肩甲骨や後頭骨も締まり、
脳、呼吸器、循環器、消化器の働きも活発です。
逆に、これらのひとつが緩むと
他の関節も緩み不具合となるので早期調整が必要です。
開く前は、身体に老廃物が溜まり排泄する時です。
極端な例が生理です。
生理前は骨盤、肩甲骨、頭蓋骨が緩み、
顔ははれぼったくなり、下半身はむくみ、憂鬱(ゆううつ)な気分になります。
排卵日時期には体調も精神状態も好調となります。
また、骨盤は夜は緩み、昼には引き締まります。
そして、春夏は緩み、秋冬は締まります。
いずれにしても、自然の摂理に従って、後頭骨・肩甲骨・骨盤が開閉することが健康を維持することです。
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